2011年5月14日土曜日

求人票と配置転換命令-気がついたら福島原発で作業の報道に思う

「宮城県で運転手募集」という求人に、大阪の方が応募して、採用されたら、福島第一原発で作業させられたという事態が発生して、マスコミにも大きく取り上げられました。求人募集の内容と実際の仕事があまりにもかけ離れすぎていて、しかも、危険度の高い職場での勤務とあっては、厚生労働省も見逃すわけには行かず、業界に、求人内容を適切に明示するよう要請しています

一般的に、会社には、地域限定や職種限定で採用していない限り、社員を配置転換したり、転勤させるという命令を出せることになっています。(もちろん、業務に必要な限りですが。)

今までの日本の会社は、定期的に人事異動を行い、社員にさまざまな職場を経験させ、成長させていくという考え方で人材育成を行ってきました。基本的には、この傾向は変わらないと思いますが、社員の方が変わってきていて、「この配転について、キャリアパスを示して欲しい。」とか、「自分には、キャリア権があるので、この人事異動は応じたくない。」、制度もないのに、勝手に、「FA宣言するので職場異動させて欲しい。」と言い出す今日この頃だそうです。仕事に向かう姿勢に、積極性ありと見てあげられればそれも良いですが、会社の人事政策についても理解して欲しいですね。

ところで、こうした社員からの要求に対して、あえて配転命令を出さなければならないとき、適切な人事措置であることを根拠づけるためには、やはり就業規則に規定があることが必要です。
就業規則には必ず入っている規程なので、見たことがある方も多いのではないでしょうか。

第21条 配置転換及び出向
会社は、業務上必要がある場合は、社員を在籍のまま他の会社へ出向させたり、社員の就業する場所または従事する業務の変更を命ずることがある。社員は正当な理由無くこれを拒んではならない。


Article 21 Transfer and secondment
When deemed necessary for the Company's business operations,the Company may second an employee to a related company or change any employee's place of work, type of work. The employees must accept such personnel changes unless otherwise justified.

日本語では拒んではいけないとなっている部分を、英訳では、意訳して、受け入れなくてはならないにしました。
The employee shall not refuse to obey the orders without justifiable reasons.としても良いです。

上の方で、地域限定とか職種限定などと書きましたが、これは、ある特定の社員を採用するときに、個別の雇用契約書の中に、両者が合意した内容として盛り込むものです。この場合は、たとえ就業規則に配転の規定があっても、会社が一方的に勤務地を変更するとか、別の仕事をさせるということはできません。どうしても必要な場合は、その社員の同意を得て、個別の契約内容の変更をするることが必要です。個別の契約内容で、就業規則よりも有利な条件の部分は個別契約が優先するということは、労働契約法7条や12条の規定で明確になっています。

他方、雇用契約書に、初任配置の就業場所や業務内容が書いてあって、「限定する」と書いていなければ、将来、変更することがあるという前提での契約となりますが、後々のトラブルを防止するために、「なお、就業場所や従事する業務内容は、業務の都合上変更することがあります。」と書き添えておくことが望ましいです。


日本労務監査協会では、就業規則のチェックを含めた労務コンプライアンス監査を行っております。
 詳しくは当協会のホームページをご覧下さい。

 または下記にメールお送り下さい。
 E-mail to:aljan@wine.ocn.ne.jp
 ALJAN事務局
 山本臣治 (YAMAMOTO Shinji)

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